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人狼 −JIN-ROH−
昭和30年代の、「もしかしたらあったかもしれない世界」を描いた
劇場版アニメーション。押井守が原作・脚本だってことで、観に行ってきた。
高度経済成長の時代の日本で、経済最優先の政策の反作用かのように、
テロなどの凶悪犯罪が増加していた。それ対抗するために組織された
武装治安部隊、通称首都警の一員の伏一貴と、とあるきっかけで知り合った
雨宮圭の物語。謀略と時代の波にもまれる二人の運命はどうなるの?
映像はとても木目細かくて動きが滑らかでびっくり。人物の表情や、
路面電車の動きとか、そこかしこにこだわりが窺える。
監督は押井守がとらないで、沖浦啓之という人が初挑戦だったらしいけど、
これは正解だったかもね。声優はほとんど名前を聞いたことのない人ばかりで、
新人さんを多く起用しているみたい。
日本のアニメなのに、国外の映画祭を皮切りに上映していって、1年以上
経ってからようやく日本上映になったとか。でも、今のところ公開されているのは
新宿テアトルとどこだかだけ。なんだかもったいない。
以下はネタばれね。
物語の背景も、絵の背景も派手さのない暗い無彩色の世界に傾いて
いる印象を受ける。つまらないという意味ではなく、作品がかなり渋く
まとめてある。それ故に、登場人物の生きざまや個性が際立つのだろう。
主人公の伏は、最初のところで撃てなかったついでに、いろいろと
思い悩むのに、結局はあの結末。はたから見ると明らかに矛盾している。
それは伏の持つ人間としての心と獣としての本性の葛藤か。それでも、
伏の生き方に共感できるところがあると思う。
圭は伏と出会って、愛に生きたいと望むが、一度闇の世界に入ったものは、
もうそこから逃れることができない。悲劇のヒロインのような美しく、
儚い役どころではない。教官の塔部が最後のほうで発する言葉、「彼女に
しても、その手で運んだ爆弾で多くの人を殺した罪から一生逃れられる
ものではない」といった感じの言葉が、とても冷酷に響く。そのあたりが
作中で残酷なものとして紹介される赤ずきんちゃんの童話と重なるのだろう。
設定面では、特機の強化装甲服が無敵すぎるのが私としてはちょっと。。
3人がマシンガン撃ってて、その前に立ちはだかっても平気ってのは
どうかと思う。
00/06/19.15:30 かわさき <kawa@yumei.com>
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00/06/19.15:30 人狼 −JIN-ROH− ( by かわさき )
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